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秋の夜長は文字を読め

おおきな玉ねぎの下で -1- (原作:大きな玉ねぎの下で・爆風スランプ)
 あれだけ暑かった夏も過ぎ去り、日が沈むのも早くなった。
今日は早く現場が片付いたとはいえ、この時間の首都高はいつもの
ように、たくさんの車が連なり、渋滞を起こしている。
昔流行った歌の歌詞ではないが、赤いテールランプがどこまでも
続いているように見えて、綺麗だなと最初は思ったものだ。
ただその思いも、見慣れていくうちに感動は薄れた。
-せっかく早く終わっても、家に着いて8時くらいか・・・-
赤い灯の連なりを見つめ、あきらめ混じりの溜息をつく。
「6号線、現在小菅JC周辺で事故処理のため、渋滞。通過に・・」
浮かない気分に追い討ちをかけるように、ラジオから流れる声。
-はぁ・・・早く処理してくれ・・-
尽きない溜息を吐きつつ助手席を見ると、後輩のアキラが携帯を
イジりながらニヤついているのが見える。
「おいアキラ、な~に携帯いじってニヤニヤしてんだよ?
 お前のことだ、またエロサイトでも見てんのか?」
ハッとしながらも、まだニヤついた顔でこちらを見るアキラ。
「え~? 違うっスよぉ。 メールっス、メール。 この前
 できたメル友なんスけど、これがまたかわいい顔してて・・・」
心の底から本当に嬉しいのだろう、アキラの顔は更に緩くなる。
「トシヤさんは、メールとかやったこと無いっスよね?
 だって歳も歳ですし、何かガラじゃないっス。 イテッ!」
アキラの少し失礼な言い草に、思わず太股を抓ってやった。
「バカ。 俺だってそんなのはやった事あんの。
 メールとはちょっと違うけどな。 それに・・・まだ俺は若い」
「ええ? マジっスか? ちょっと聞かせてくださいよ~!
 トシヤさんのそんな話、初めてっスから!  イテッ!」
再びアキラを抓り、何かを思い出すように目を左前方に移す。
夕焼けが夕闇に変わる街の中、大きな玉ねぎに似た光が流れた・・・


(BGM入る:爆風スランプ 大きな玉ねぎの下で)


 ♪走る~走る~おれ~た~ち  流れ~る汗もそのま~ま~に ♪
-うわあカッチョいい! まさに俺にピッタリの曲だでぇ!
東北の片田舎に住む俺は、東京から送られてきたその歌にシビれた。
どこの田舎の中学生でもテレビや雑誌で見る物、東京のものに憧れる。
それに習うわけではないが、俺たちもそんな子供であって、
学校の休み時間などは、好きな歌手、番組、マンガの話などを
毎日のように飽きもせずにしあった。
「おートシヤー、この前貸したCD、ダビングしたが?」
「あ? プリプリのヤヅが? まだだがら、もう少し待ってけろ」
「じゃ、代わりにジュンスカのヤヅ貸してけろっちゃ」
「あ、いいげど。 あー、んだんだ、聞ぎだいごとあるんだげっとよ」
「何や?」
「んとよ、タケシ、爆風スランプって知ってだが?」
「あー、あのハゲっだやづ歌ってだバンドな。 何したなや?」
「誰がCD持ってねえがや? オラ、好ぎなんだわ」
「誰も持ってねえんねが? あまりうぢらでは人気ねえし」
「んだが・・・ま、しょうがねえな。自分で買うちゃ」
とは言うものの、少ない小遣いのなか、例えシングルCD一枚買う
のにも難儀するもので、誰か持っている者はいないか探したが、
結局見つからず、仕方なくラジカセをテレビに密着させ、
ちょうど良くベストテンに出た時に、録音したのだった。


中二の夏が近づき、爆風スランプは新曲を出した、らしい。
「らしい」と言うのも、新譜を知る手がかりは友達の口コミに
頼っていたような状況だったし、ベストテンに出るとしても、
ランキングされるのは少し経ってからなので、詳しいことは
なかなか知ることが出来なかったのである。
それに口コミといっても、あれからしばらく時間が経ったとはいえ、
未だ爆風スランプのファンは見付けられなかったので、
その情報を得るのには大変な難儀をしたものだ。
-どうにかして、常に爆風スランプの新しい情報を得ていたい-
その思いを胸に、日々を送っていた時、一つの情報を得た。
「パチパチって雑誌に、よく出てるよ」
どうやらその雑誌は、人気があるバンドだけでなく、あまり
日の目を見ないようなバンドまで扱っている上、俺らのような
素人同然の者でも読みやすい誌面であるらしい。
-よし、いっちょ買ってみるべ-
授業の終了と共に本屋へ向かい、PATI-PATIを手に取った。


「ただいま~ めし~ はらへったず~」
「おかえり。 まだご飯出来でねえよ? 帰んの早がったし」
「んだが、んじゃ後ででいいや」
バレるはずはないのだが、鞄に本を隠していることを悟られない
よう、さりげなく鞄を背に向け、部屋へと入った。
エッチな本ではないものの、やはりどこか後ろめたい気持ちが
あったのだ。 ロックやバンドは、不良がやるものと言われてもいた。
ベッドの上で、鞄から本を取り出し、宝物のように表紙を眺める。
表紙にはたくさんのバンドの名前が並んでいて、なるほど、
教えてもらったように、メジャーなものだけでないことがわかる。
その数ある名前の中に、爆風スランプの名前も見付け安心する。
「ほう、新曲は”リゾラバ”っていうのか・・・」
「メンバーの名前、少し変だよな。何だよパッパラーって」
特集を見ながら一人ごちていると、下からかあちゃんの声がした。
どうやらご飯が出来たらしい。 本を閉じ、階段を下りた。


夜ご飯を済ませた後、またベッドで本を読んだ。
爆風スランプだけでなく、他のバンドも好きだったので、
時間はかかったが、本の隅々まで少しを残し、読み終えたような
状況になった。
-ちょっと高い出費だったけど、買って良かったかな・・・-
時間も11時を過ぎた。 もう少し読んで寝よう。
そう思った時ある記事が目に入った。
「ん・・・? 文通コーナー?」



10/28 現在ここまでとなっております。
   次回更新は。。。未定です(^^;
   早く書きますので、許してにゃんまげ(’▽’)

 
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>ジミにぃ
ハイ・・・コンゴトモヨロシク・・・(ボウ メガミテンセイ フウ
sivasix | URL | 2007/11/06/Tue 07:50 [編集]
ツヅキ マッテル キナガ ニ 。
ジミへん | URL | 2007/10/28/Sun 21:02 [編集]
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